2018年6月6日にリリースされたDA PUMPの29枚目シングル「U.S.A.」は、現代の日本の音楽シーンにおいて、ある種の「奇跡」とも呼べる巨大なムーブメントを引き起こした歴史的な楽曲です。1992年に発表されたJoe Yellowの同名ユーロビート楽曲のカバーである本作は、大型のCMタイアップ等があったわけではないにもかかわらず、東京オリンピックなどのスポーツ中継、バラエティ番組、さらには全国の運動会や体育祭のBGMとして爆発的に普及しました。分散しがちだった日本人の音楽の趣味嗜好を、まるで一つの場所に力強く束ね直したかのようなこの「国民的パーティーチューン」が、なぜこれほどの社会的ブームを生み出したのか。プロデューサー視点からその本質を深く考察していきます。
完璧すぎる現代へのアンチテーゼと絶妙なダサかっこよさ
現代のエンターテインメント業界は、情報が極限まで洗練されており、隙のない完璧なビジュアルや楽曲が溢れ返っています。そうした中で突如として現れた「U.S.A.」は、ユーロビート特有の少し古臭いB級感(懐かしさ)と、それに反比例するようなDA PUMPの「超一流のボーカル&ダンススキル」という、強烈なギャップを持っていました。
SNS等で「ダサかっこいい」と形容されたこの絶妙なバランス感覚は、完璧さばかりが求められる現代において最高に新鮮な体験としてリスナーに受け入れられました。「クールにカッコつけること」よりも、「プライドを捨てて全力で目の前の人を楽しませること」の尊さとエンタメの原点を、現代の日本人に強烈に再認識させてくれたのです。
波乱万丈な歴史と苦労がもたらした強靭な説得力
DA PUMPといえば、かつては「if…」などのR&Bテイストのヒット曲で知られていましたが、失礼を承知で言えば、一時期はメディア露出が減り、どこか過去のグループとして捉えられがちだった時期もありました。実際に「if…」を発表していた全盛期とはメンバー構成も大きく変わり、グループとしては非常に長く苦しい低迷期を経験しています。
ボーカルであり絶対的支柱であるISSA自身も、数々のスキャンダルや度重なるメンバーの一新など、まさに波乱万丈な人生を歩んできました。しかし、そうした「どん底の苦労」を骨の髄まで味わってきた彼らだからこそ、「U.S.A.」のステージで満面の笑みを浮かべながら放つパワフルなボーカルと尋常ではないエネルギーには、嘘偽りのない強靭な説得力が宿っていました。苦難を乗り越えて再び光を浴びる彼らの姿を見て、「ああ、本当によかったな」と素直に心を動かされ、涙した視聴者は決して少なくありません。
インベーダーダンスが生み出したSNSでの爆発的拡散
この楽曲が社会現象へと発展した最大の起爆剤は、何と言っても「カモンベイビーアメリカ」というキャッチーなフレーズに合わせて踊る「いいねダンス」、そしてかつてのアーケードゲームを思わせる横移動の「インベーダーダンス」です。
一見すると非常にシンプルでコミカルに見えるこれらの振り付けですが、実際にやってみると強靭な体幹と正確なリズム感が求められるプロの難易度であることが分かります。この「簡単そうに見えて実は難しい」という絶妙な塩梅が、かえって人々の「真似してみたい」「自分も踊ってみたい」という欲求を強く刺激しました。結果として、数多くの一般ユーザーや著名人がこのダンスに挑戦する動画をSNSに投稿し、忘年会やカラオケで全員が一体となって盛り上がれる最強のキラーチューンとして、日本中に拡散されていったのです。
ハロプロファンとの奇跡的な共鳴とケミストリー
そして、この「U.S.A.」のブレイクを語る上で絶対に外せない独自の視点が、ハロー!プロジェクト(ハロプロ)のファン層との奇跡的な共鳴です。
この楽曲の持つ、少しチープでありながらも熱量が高く、四つ打ちで疾走するユーロビートの曲調は、過去のハロプロの黄金期を支えたつんく♂氏の楽曲群の構造と非常に近い「匂い」を持っていました。その懐かしさと圧倒的な親しみやすさに、耳の肥えたハロプロファンがいち早く反応したのです。ライブで盛り上がることを前提とした熱い構成に対し、ハロプロファンたちが自発的にアイドルのコンサートさながらの「独自のコール」を作り上げ、現場の熱狂をさらに一段階上の次元へと引き上げていきました。
異なるジャンルの音楽ファンたちが壁を越えて一つになり、楽曲を育て上げていく。この予想外のケミストリーの発生こそが、DA PUMPの「U.S.A.」が単なる一過性のヒットを超えて、音楽史に深く刻まれる国民的アンセムとなった最大の理由だと言えるでしょう。
原曲↓
