2025年9月19日にリリースされたXGの「GALA」は、彼女たちの記念すべき1stフルアルバム『The Core(核)』からの先行配信シングルとして世に放たれました。作詞・作曲・編曲には、XGの総合プロデューサーであるJakops(SIMON)をはじめ、ChancellorやDoomsdayといった世界基準のトップクリエイター陣が名を連ねています。アメリカの人気番組『The Voice(ザ・ヴォイス)』のシーズン28フィナーレという巨大な舞台でも見事に披露され、米国をはじめとするグローバル市場での認知を爆発的に拡大させている本作。本記事では、この楽曲がいかにして従来の日本のアイドルシーンの常識を覆し、これからのエンタメ業界におけるひとつの明確な「正解」を提示しているのかを、プロデューサー視点から深く考察していきます。
感情の爆発をあえて削ぎ落とした洗練された引き算の美学
「GALA」を一聴してまず驚かされるのは、多くのJ-POPやK-POPにおいて必須とされるような、分かりやすい感情的なピークやキャッチーすぎるサビの爆発が、意図的に極限まで抑制されている点です。一般的なポップソングは、サビでメロディを大きく動かし、ドラマチックな物語や感情の共有を通して聴き手の心を強引に掴もうとします。しかし、XGはそうした「分かりやすさ」をあえて選びません。
楽曲の展開は非常にストイックに抑えられ、強いフックも控えめに設計されたまま、R&Bやヒップホップをベースにした重厚でタイトなトラックが一定の極上のグルーヴを保って進んでいきます。この徹底して洗練された「引き算の美学」によって、過剰な装飾に邪魔されることなく、XGというグループが持つ鋭利な輪郭や、メンバー一人ひとりの声の繊細なディテール、そして単なるアイドルの枠を完全に超越した卓越したパフォーマンス能力がはっきりと浮かび上がる見事な構造になっているのです。
歌うための曲ではなくアーティストの姿勢を纏うための曲
この楽曲の最大の面白さは、「歌を聴かせる」というよりも、「空間や身体と結びつくこと」を大前提として緻密に設計されている点にあります。ファッションやランウェイをテーマにしたこの曲は、クラブミュージックやハイブランドのファッションショーで流れる音楽に近い性質を持っています。つまり、リスナーが一緒に大声で「歌うための曲」として作られているのではなく、彼女たち自身の圧倒的なスキルとアティチュード(姿勢)そのものを「纏う(まとう)ための曲」として存在しているのです。
リスナーへの安易な感情移入を誘うのではなく、世界を舞台にした自信や自己表現の強さ、そして圧倒的な“在り方”や“立ち姿”を提示する。「GALA」は、XGにとって単なる新しい挑戦作というよりも、「私たちは今、ここに立つ」という現在地を示す強烈な宣言(座標)としての役割を果たしています。そのため、分かりやすい感情的なピークがなくとも、グループの存在感そのものが圧倒的な説得力を持ってリスナーに迫ってくるのです。
エイベックスの狂気が昇華された国籍不明のグローバルな強さ
また、彼女たちのパフォーマンスや楽曲の構成からは、日本的な文脈や土着性が極限まで削ぎ落とされていることが分かります。歌詞には英語をベースに、時にフランス語や日本語がシームレスに混ざり合い、グローバルな視点とスタイリッシュさを強調しています。全員が日本人でありながら、言語や文化的な匂いを意識的に排除し、「国籍不明のグローバルな存在」として世界と対等に渡り合う強さ。その曖昧さこそが、世界のトップ・オブ・トップと戦う上での最大の武器となっています。
そこには、エイベックスという企業が長年培ってきた「Really! Mad+Pure(狂気)」のDNAが、世界基準のクリエイティブとして完全に昇華された姿を見ることができます。ただ目先のトレンドを追うのではなく、純粋な音楽性と人間性のスキルにパラメーターを全振りし、世界中に新しい価値観を提示し続けるXGの存在は、エンターテインメントの未来を切り拓く希望そのものです。
時間をかけて身体を侵食する唯一無二のサウンドスケープ
SNSや世界中の音楽コミュニティにおいても、「ライブ感やビートが最高で、自信を引き出してくれるパワフルな一曲」という熱狂的な賛辞が溢れる一方で、「最初は独特なサウンドに驚いたが、聴き込むほどに抜け出せなくなる」という、この曲の持つスルメ的な魅力に気づくリスナーが続出しています。
「GALA」は、一度聴いてすぐに誰もが口ずさめるような、いわゆる分かりやすい大衆的な名曲ではないかもしれません。しかし、その派手なビジュアルやパフォーマンスの裏にある冷静な設計と思想は、時間をかけて確実にリスナーの感性に効いてきます。気づけば、その洗練されたグルーヴや空気感が静かに身体に残り、何度もリピートしてしまう。これこそが、世界の音楽シーンを牽引するXGが仕掛けた、最も美しく、そして最も計算し尽くされた音楽体験の形なのです。
